【私の人生を心理学で振り返る③】母の背中に隠れていた私 ― においと一緒に残った幼い頃の記憶(自分の体験談より)
2026/09/16
幼い頃、私は父の実家で
暮らしていた時期があったようです。
たぶん、3歳か4歳くらいの頃だったと思います。
父の実家には、祖父と祖母、
父の弟、父の妹などがいました。
祖父はいつも少し独特な
においがしていました。
祖母は口うるさく、
父の弟は声が大きい人でした。
父の妹は、比較的
穏やかな人だった記憶があります。
今振り返ると、
私は父の実家の雰囲気が
あまり好きではありませんでした。
家の中が、いつも少し
騒がしく感じられたのです。
幼い私には、事情までは分からなかった
小学生になってから、
母にいろいろな話を聞きました。
私たち家族は、父の実家の2階に
住まわせてもらっていたそうです。
当時、父が長男なら実家に住むのは
当たり前のことでしたが、
なぜか「住まわせてもらっていた」ということです。
その頃、母は祖母からかなり厳しく
言われることが多く、つらい思いをしていたと聞きました。
いわゆる嫁姑の関係が、
かなり大変だったようです。
祖母と父の弟も、
よく口げんかをしていたように記憶しています。
ですから家の中では、
大きな声が聞こえることがよくありました。
父は、その中では
比較的穏やかな人だったようです。
当時の私は、
もちろん大人同士の関係や事情までは分かっていません。
誰が誰に何を言ったのか。
なぜ母が嫌な思いをしていたのか。
なぜ家の中で言い争いが起きていたのか。
そんなことは理解できませんでした。
それでも、
「ここは落ち着かない」
「なんとなく居心地が悪い」
という感覚は持っていたのだと思います。
子どもは「家族の空気」を感じ取る
子どもは、大人が思っている以上に
周囲の雰囲気を感じ取ります。
言葉の内容が分からなくても、
声の大きさ。
表情。
話し方。
人と人との距離。
誰かが緊張している様子。
こうしたものを感じています。
特に、身近な大人が不安そうにしていたり、
緊張していたりすると、
子どもも落ち着かなくなることがあります。
心理学では、幼い子どもにとって、
安心できる大人とのつながりはとても大切だと考えられています。
私の場合、それは母だったのでしょう。
父の実家にいるとき、私はよく母のそばにいました。
母の背中に隠れていた私
その後、私たち家族は
団地に引っ越しました。
父と母、兄、私たち子ども。
家族だけの生活が始まりました。
私は、その団地での生活の方が
落ち着いていたように思います。
ところが、お正月になると、
父の実家へ新年のあいさつに行かなくてはなりません。
私は毎年、
「また、あの騒がしい家に行くのか」
という気持ちになっていました。
実家に行っても、
私は特に祖父母と
たくさん話すわけでもありませんでした。
家の中に入ると、
なんとなく落ち着かない。
大きな声がする。
独特の雰囲気がある。
私は、よく母の背中に
隠れるようにしていました。
今振り返ると、それは幼い私なりに、
「ここなら安心できる」
という場所を求めていたのかもしれません。
実家に近づくと、決まって変なにおいがした
そして、この父の実家の記憶には、
もう一つ強く残っているものがあります。
それが、においです。
父の実家へ向かう途中、
家の近くまで来ると、
いつも独特なにおいがしていました。
近くに食品関係の工場のようなものがあったのだと思います。
何を作っていたのかは覚えていません。
ただ、私はそのにおいがとても苦手でした。
実家に近づく。
あのにおいがしてくる。
そして、その先には、
騒がしくて落ち着かない家がある。
幼い私の中では、そのにおいと
父の実家が強く結びついていたのでしょう。
また、祖父にも独特なにおいがありました。
あとになって聞いたところでは、
お酒をよく飲む人だったようです。
そうしたいくつもの「におい」が、
父の実家の記憶と一緒に残っています。
大人になって、同じようなにおいをかいだ瞬間
それから長い年月がたちました。
大人になってから、あるとき、
昔とよく似た嫌なにおいをかいだことがありました。
その瞬間でした。
父の実家のことを、急に思い出したのです。
家の雰囲気。
騒がしさ。
母のそばにいた自分。
あまり行きたくなかった気持ち。
それまで普段は意識していなかった記憶が、
においをきっかけに一気によみがえってきました。
私は、
「においって、こんなに昔の記憶とつながっているんだ」
と驚きました。
においは、記憶や感情と結びつきやすい
脳科学では、においを感じる嗅覚は、
記憶に関わる海馬や、感情に関わる扁桃体と
近い関係にあると考えられています。
そのため、においは昔の記憶や感情を
呼び起こしやすい特徴があります。
あるにおいをかいだ瞬間、
昔の家を思い出す。
ある人を思い出す。
子どもの頃の場面が急によみがえる。
そんな経験をしたことがある人もいると思います。
私の場合は、父の実家の近くでかいでいたにおいが、
「落ち着かない場所」
「行きたくない場所」
という感覚と一緒に残っていたのでしょう。
そして大人になって、よく似たにおいをかいだとき、
記憶だけでなく、その頃の感情まで一緒に
よみがえってきたのだと思います。
記憶は、言葉だけで残るわけではない
私たちは過去の出来事を、
「いつ、どこで、何があった」
という言葉だけで覚えているわけではありません。
音。
におい。
景色。
誰かの声。
身体の感覚。
その場の空気。
そうしたものも一緒に残っています。
だから、自分では忘れていたと思っていた出来事が、
何かのきっかけで突然よみがえることがあります。
そして、そのとき、
「なぜ自分は、このにおいがこんなに苦手なのだろう」
「なぜ、この場所に来ると落ち着かないのだろう」
と感じることもあります。
そこには、昔の経験がつながっていることがあります。
幼い私は、母の緊張も感じていたのかもしれない
今振り返ると、もう一つ考えることがあります。
私は父の実家が嫌いでした。
でも、その理由は、祖父母や
叔父の言動だけだったのでしょうか。
母自身が、その家でつらい思いをしていた。
母が緊張していた。
母が居心地の悪さを感じていた。
幼い私は、そんな母の気持ちも
感じ取っていたのかもしれません。
子どもは、大人が言葉にしなくても、
表情。
声の調子。
身体の動き。
その場での緊張感。
そうしたものから、
さまざまなことを感じ取ります。
だから私は、母の背中に隠れていたのでしょう。
母のそばが、私にとって一番
安心できる場所だったのだと思います。
今の自分の「苦手」にも、理由があることがある
私たちは大人になると、
「どうして自分は、こういう場所が苦手なのだろう」
「どうして、このにおいが嫌なのだろう」
「なぜ、声の大きい人が苦手なのだろう」
と感じることがあります。
その理由が、今の出来事だけにあるとは限りません。
幼い頃にどんな場所で過ごしたのか。
誰と一緒にいたのか。
どんな声を聞いていたのか。
どんなにおいがしていたのか。
どんな気持ちでその場にいたのか。
そうした経験が、
今の自分の感じ方につながっていることがあります。
私の場合、
父の実家の近くでかいでいたにおい。
家の中の騒がしさ。
そして、母の背中に隠れていた自分。
これらが、一つの記憶として今も残っています。
あなたの人生も、心理学の視点から振り返ることができます
今の自分には、
理由は分からないけれど苦手なもの。
なぜか落ち着かない場所。
特定のにおいや音に対する強い反応。
人間関係の中で繰り返し感じる不安。
そうしたものがあるかもしれません。
子どもの頃から現在までを丁寧に振り返っていくと、
「自分のこの感覚は、
あの頃の経験とつながっているのかもしれない」
「だから、この場面になると落ち着かなくなるのかもしれない」
と、自分を理解する手がかりが見つかることがあります。
私のカウンセリングでも、
ご自身の生い立ちから現在までを一緒に振り返りながら、
心理学などの視点を取り入れて、
今の人間関係や生きづらさとのつながりを整理していくことができます。
あなたの人生も、心理学の視点から振り返ってみませんか。
自分のこれまでを知ることは、これからの自分を知ることにもつながります。
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