【私の人生を心理学で振り返る④】おとなのことばがわからない ― 幼い私が見上げていた“大人の世界”(自分の体験談より)
2026/09/18
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幼稚園の頃から、
小学校1年生くらいまでのことだったと思います。
当時、私は団地に住んでいました。
団地の中には、
子どもが遊べる場所がたくさんあり、
私はよく一人で三輪車に乗っていました。
ある日のことです。
私が三輪車に乗っていると、
少し先で三人のおばさんたちが楽しそうに話をしていました。
その中の一人は、私の母でした。
私は三輪車に乗ったまま、
その人たちを下から見上げていました。
そして、こう思っていました。
「何を話しているんだろう」
聞こえているのに、意味がわからない
おばさんたちは、
楽しそうに話しています。
笑ったり、うなずいたりしています。
きっと三人の間では、
話の内容がよく分かっていたのでしょう。
でも、幼い私には、
何を話しているのか全く分かりませんでした。
言葉は聞こえています。
日本語で話していることも分かります。
それなのに、意味が分からない。
私はそのとき、
「大人の会話って、難しいんだな」
と感じました。
そして、もう一つ思ったことがあります。
「この世には、
僕の知らない難しい言葉がいっぱいあるんだな」
幼い私にとって、それは少し驚きでもありました。
自分の知らない世界がある
子どもの頃の私は、当然ですが、
自分の知っている言葉が世界のほとんどだと思っていたのかもしれません。
ところが、その日、大人たちの会話を聞きながら、
「自分の知らない言葉がこんなにある」
ということに気づきました。
それは、言葉だけの話ではなかったように思います。
大人には、大人だけが分かる話がある。
自分にはまだ分からないことがある。
自分の知らない世界が、目の前にある。
そんな感覚でした。
私は三輪車に乗ったまま、
大人たちを見上げていました。
身体の大きさも違う。
目線の高さも違う。
話している内容も分からない。
まさに、
「自分と大人の世界は違う」
ということを、幼いなりに感じていたのだと思います。
「僕も、あんなふうに話せるようになるのかな」
そのとき、私はこんなことも考えていました。
「僕も大きくなったら、
ああやって難しい話ができるようになるのかな」
今思い返すと、とても子どもらしい疑問です。
でも、当時の私にとっては、
かなり大きなことだったのでしょう。
大人たちは楽しそうに話している。
みんな分かっているように見える。
自分だけ分からない。
その中で、
「自分もいつか、あの世界に入れるのかな」
と感じていたのだと思います。
「わからない」ことが、少し怖かった
その場面を思い出すと、
私は不思議な気持ちになります。
強い恐怖があったわけではありません。
泣きたくなるほど寂しかったわけでもありません。
でも、何か少し不安だった。
少し寂しかった。
自分だけ取り残されているような感じもあった。
その感覚は、今でも覚えています。
私たちは、「分からない」という状態にいると、
不安を感じることがあります。
何が起きているのか分からない。
周りの人は理解しているのに、
自分には分からない。
そういう場面では、
心が少し落ち着かなくなります。
大人でも同じです。
知らない専門用語ばかりの会議。
初めて参加する集まり。
周りの人だけが事情を知っている場面。
そんなとき、
「自分だけ分かっていない」
という感覚を持つことがあります。
幼い私は、三輪車の上で、
それに近い感覚を初めて経験していたのかもしれません。
子どもは「自分と他者の違い」に少しずつ気づいていく
心理学では、子どもは成長するにつれて、
自分と他の人が同じではないことを少しずつ理解していきます。
自分が知っていることと、
相手が知っていることは違う。
自分の考えていることを、
相手が全部知っているわけではない。
相手にも、自分とは違う考えや知識がある。
こうしたことを少しずつ理解していくことは、
心の成長の一つです。
私が大人たちの会話を見上げながら、
「みんなは分かっているけれど、僕には分からない」
と感じたことも、
その成長の途中にあった出来事なのかもしれません。
同時に、
「自分にも、まだ知らないことがたくさんある」
ということに気づいた瞬間でもあったのでしょう。
言葉が増えると、世界も広がっていく
子どもは、成長する中で
たくさんの言葉を覚えていきます。
言葉が増えると、
自分の気持ちを表現しやすくなります。
人の話も理解できるようになります。
そして、今まで見えていなかった
世界も少しずつ見えてきます。
たとえば、
「不安」
「悔しい」
「恥ずかしい」
「寂しい」
「うらやましい」
という言葉を知ることで、
「自分が感じていたものは、これだったのか」
と分かることがあります。
言葉を知ることは、
物の名前を覚えることだけではありません。
自分の心を理解するための
道具を増やすことでもあります。
幼い頃の私は、
「大人の言葉が分からない」
と感じていました。
でも、その後、少しずつ言葉を覚えながら、
世界の見え方も変わっていったのだと思います。
子どもが黙っているとき、何を感じているのか
この経験を今振り返ると、
子どもを見るときにも大切なことがあると感じます。
子どもが黙っていると、
「何も考えていないのかな」
と思うことがあります。
でも、実際にはいろいろなことを感じています。
言葉にできないだけかもしれません。
意味が分からず、じっと考えているのかもしれません。
周りの人の様子を見ながら、
「何が起きているんだろう」
と考えているのかもしれません。
私自身も、大人たちを見上げながら、
何も言わずに三輪車に乗っていました。
でも、心の中では、
「分からない」
「みんなは分かっている」
「僕もいつか分かるようになるのかな」
と、いろいろなことを考えていました。
子どもの心の中には、
大人からは見えない世界があります。
「わからない」と言えることも大切
もう一つ、今だから思うことがあります。
子どもは、
「分からない」
と言えずに黙ってしまうことがあります。
周りのみんなが分かっているように見える。
自分だけ分かっていないのが恥ずかしい。
何を聞けばいいのかも分からない。
そんなとき、子どもは言葉を出せなくなることがあります。
だからこそ、大人の側から、
「分からないことはある?」
「今の話、分かった?」
「難しかったら聞いていいよ」
と声をかけることは、とても大切だと思います。
「分からない」と言ってもいい。
分からないことがあってもいい。
そう思えるだけで、
子どもの安心感はずいぶん違います。
幼い私が見上げていたもの
今でも、あのときの場面を思い出します。
団地の中。
三輪車に乗っている私。
その少し先で楽しそうに
話している三人のおばさんたち。
そして、下からその姿を見上げている自分。
「大人って、難しい言葉をたくさん知っているんだな」
「僕も、いつかあんなふうに話せるのかな」
そんなことを考えていました。
今思うと、あのとき私は、
大人の世界を初めて少し遠くから眺めていた
のかもしれません。
そして同時に、
自分には、これから知っていく世界がたくさんある
ということにも、少しずつ気づき始めていたのでしょう。
あなたの人生も、心理学の視点から振り返ることができます
私たちの今の感じ方や考え方には、
子どもの頃のささやかな経験がつながっていることがあります。
大きな出来事だけが心に残るわけではありません。
誰かの会話を聞いていたこと。
一人で立っていたこと。
何かが分からず、不安になったこと。
大人の世界を遠く感じたこと。
そんな何気ない場面が、
何十年たっても記憶に残っていることがあります。
子どもの頃から現在までを振り返っていくと、
「自分は、あの頃こんなことを感じていたんだ」
「今の自分の感じ方にも、何かつながっているのかもしれない」
と、自分を理解する手がかりが見つかることがあります。
私のカウンセリングでも、
ご自身の生い立ちから現在までを一緒に振り返りながら、
心理学などの視点を取り入れて、
今の人間関係や生きづらさとのつながりを整理していくことができます。
あなたの人生も、心理学の視点から振り返ってみませんか。
自分のこれまでを知ることは、これからの自分を知ることにもつながります。
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