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本田宗一郎は、なぜ失敗を恐れなかったのか ――心理学・行動心理学・脳科学から考える「失敗との付き合い方」

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本田宗一郎は、なぜ失敗を恐れなかったのか ――心理学・行動心理学・脳科学から考える「失敗との付き合い方」

本田宗一郎は、なぜ失敗を恐れなかったのか ――心理学・行動心理学・脳科学から考える「失敗との付き合い方」

2026/09/09

 

失敗するのが怖い。

できれば失敗したくない。

 

新しいことに挑戦するとき、

「うまくいくだろうか」

「失敗したらどうしよう」

と考えることがあります。

 

失敗したときの恥ずかしさや、

周囲からどう見られるかが気になって、

一歩を踏み出しにくくなることもあります。

 

そんな「失敗」と何度も向き合いながら、

新しいものづくりに挑戦し続けた人がいます。

 

本田宗一郎さんです。

 

本田宗一郎さんは、

自動車やオートバイで世界的に知られる

Honda、本田技研工業の創業者です。

 

1906年に静岡県で生まれ、

若いころから機械やものづくりに

強い関心を持ち、やがてHondaを創業しました。

 

オートバイから自動車へと事業を広げ、

Hondaを世界的な企業へと

育てていった技術者でもあります。

 

その歩みの中では、

新しいことに挑戦し、

うまくいかなければ考え、

方法を変え、また試す

という経験を何度も重ねています。

 

本田宗一郎さんは、

失敗について多くの言葉を残しています。

 

Hondaの公式サイトにも、

失敗せずに問題を解決した人と、

何度も失敗しながら問題を解決した人がいたら、

同じ時間なら失敗した人を選ぶ、

という趣旨の言葉が紹介されています。

 

失敗の中で苦しみ、

考えた経験が、その後の飛躍につながる。

 

本田宗一郎さんは、

そんな考え方を持っていたのでしょう。

 

では、同じように失敗しても、

「もうやりたくない」

と思う人と、

 

「次はどうすればいいだろう」

と考えられる人がいるのは、なぜでしょうか。

 

ここには、心理学、行動心理学、

そして脳科学から見ても、

とても興味深い心の仕組みがあります。

 

 

 

失敗したあと、何を考えるか

 

たとえば、

仕事で新しい企画を提案したとします。

 

一生懸命準備したものの、

思うような結果にはなりませんでした。

 

そのとき、

「やっぱり自分には才能がない」

と思う人もいます。

 

「今回は、ここがうまくいかなかった。

 次はやり方を変えてみよう」

と考える人もいます。

 

起きた出来事は同じです。

 

そのあとに、自分がどんな意味を

つけるかによって、次の行動が変わってきます。

 

心理学では、

自分の能力や成長をどのように捉えているかが、

その後の行動に影響すると考えられています。

 

その一つが「成長マインドセット」です。

 

能力は、経験や学習によって伸ばしていける。

 

そう捉える人は、失敗したときにも、

「何が悪かったのだろう」

「次は何を変えればいいだろう」

と考えやすくなります。

 

失敗が、自分の能力を決めるものから、

次に生かす材料へと変わっていきます。

 

本田宗一郎さんの考え方にも、

これに通じるところがあるように感じます。

 

失敗した。

そこで一つの情報が増えた。

次は、その情報を使ってもう一度やってみる。

 

そんな姿勢です。

 

 

 

「失敗した」と「私はダメだ」は違う

 

失敗したとき、

心の中で何が起きているかを

少し細かく見てみましょう。

 

「今回はうまくいかなかった」

これは、起きた出来事についての言葉です。

 

そこから、

「私は能力がない」

「私は何をやってもダメだ」

と考えると、一つの失敗が、

自分全体の評価へと広がっていきます。

 

すると、次に何を変えるかを考えるよりも、

「どうして私はこうなんだろう」

「また失敗してしまった」

と、自分を責めることに

心のエネルギーを使いやすくなります。

 

一方で、

「今回はこの部分がうまくいかなかった」

と捉えると、次の行動を考えやすくなります。

 

「説明の仕方を変えてみよう」

「もう少し準備してみよう」

「別の方法も試してみよう」

 

失敗の中から、

次に使える情報を取り出せるようになります。

 

本田宗一郎さんは、

失敗を自分の価値と結びつけるよりも、

ものづくりの途中で得た材料として扱っていたのかもしれません。

 

 

 

行動心理学から見る「失敗を避ける行動」

 

ここで、行動心理学から考えてみます。

 

一度、大きな失敗をして

恥ずかしい思いをしたとします。

 

次に似た場面が来ると、

「また同じ思いをするかもしれない」

という不安が出てきます。

 

そこで、その場面を避けます。

 

すると、不安が少し下がります。

 

たとえば、

人前で話して失敗した。

次の発表を断る。

人前に立たなくて済んで、少し安心する。

 

この「安心した」という経験が、

その後の行動に影響します。

 

行動心理学では、

嫌な状態が減ることで、

その行動が増えていくことを「負の強化」と呼びます。

 

つまり、

避ける。

安心する。

また避ける。

 

という流れができることがあります。

 

避けることで、

その場は楽になります。

 

同時に、

「やってみたら意外とできた」

「前回よりうまくいった」

「失敗しても立て直せた」

 

という新しい経験をする機会は少なくなります。

 

その結果、

失敗への怖さが長く残ることがあります。

 

 

 

小さく挑戦すると、新しい経験が増える

 

失敗への怖さを小さくしていくときに大切なのは、

小さな経験を積むことです。

 

たとえば、人前で話すことが怖い人なら、

最初から大勢の前で話すより、数人の前で話してみる。

 

新しい仕事が不安なら、

全部を変えるより、一部分だけ新しい方法を試してみる。

 

すると、

「思っていたよりできた」

「少し緊張したけれど、最後までできた」

「失敗したけれど、修正できた」

という経験が生まれます。

 

こうした経験が一つずつ増えていくと、

「失敗したら終わり」

というイメージが、

「失敗しても、そこから戻れる」

というイメージへ少しずつ変わっていきます。

 

本田宗一郎さんが何度も試し、

改良を重ねていった姿勢にも、

こうした「行動しながら学ぶ」という考え方が重なります。

 

 

 

脳は「予想と違ったこと」から学ぶ

 

ここから少し脳科学の話をしてみます。

 

私たちの脳は、

これから起きることを予測しながら行動しています。

 

「こうしたら、こうなるだろう」

「この方法なら、うまくいくだろう」

そんな予測をしながら動いています。

 

ところが、実際の結果が予想と違うことがあります。

 

その「予想と結果のズレ」が、

学習にとって大切な情報になります。

 

脳科学では、これを「予測誤差」と呼びます。

 

たとえば、

「この方法ならうまくいく」

と思って試した。

 

ところが、うまくいかなかった。

 

すると脳には、

「予想と違った」

という情報が入ります。

 

その情報をもとに、

「次は、ここを変えてみよう」

という修正が起こります。

 

私たちの脳は、

予想通りにいったときだけ

学んでいるわけではありません。

 

予想と違ったときにも、

多くのことを学んでいます。

 

失敗は、脳にとって次の行動を

修正するための重要な情報になります。

 

 

 

脳には「間違いに気づく仕組み」がある

 

私たちの脳には、

自分の行動のズレや間違いに気づき、

その後の行動を調整する働きもあります。

 

心理学や脳科学では、

こうした働きを「エラーモニタリング」と呼びます。

 

何かをして、

「あ、間違えた」

と感じる。

 

そこで、

「次はどうしよう」

と行動を調整する。

 

この繰り返しによって、

人は少しずつ学習していきます。

 

子どもが自転車に乗れるようになるときもそうです。

 

最初から完璧に乗れる人はほとんどいません。

 

ふらつく。

足をつく。

バランスを変える。

また乗ってみる。

 

その繰り返しの中で、

「ここまで傾くと危ない」

「このくらいの力でこげばいい」

という感覚を身につけていきます。

 

つまり、間違いや失敗も、

学習を進めるための大切な材料なのです。

 

 

 

本田宗一郎さんは「うまくいかない方法」も集めていた

 

本田宗一郎さんの失敗に

対する考え方を見ていると、

一つ興味深いことがあります。

 

何かがうまくいかなかったとき、

「一回失敗した」

と考えることもできます。

 

同時に、

「一つ、うまくいかない方法が分かった」

と考えることもできます。

 

後者の見方なら、

失敗の中にも情報があります。

「この材料では難しい」

「この方法ではうまくいかない」

「この順番を変えたほうがいい」

 

一つ失敗するたびに、

次に試す方法が少し絞られていきます。

 

失敗が、減点から情報へ変わります。

 

本田宗一郎さんが多くの失敗を経験しながら

新しいものづくりに挑戦し続けられた背景には、

このような考え方があったのかもしれません。

 

 

 

100点を目指し続けると、最初の一歩が重くなる

 

私たちは、ときどき最初から100点を目指します。

 

「ちゃんと準備してから始めよう」

「もっと勉強してからやろう」

「失敗しない方法が分かってから動こう」

 

そう考えているうちに、

最初の一歩が重くなることがあります。

 

一方で、

まず60点くらいでもやってみる。

 

やってみて分かったことを使って、70点にする。

 

また修正して、80点にする。

 

そんな進み方もあります。

 

新しいことには、

実際にやってみなければ分からないことがあります。

 

考える。

やってみる。

分かる。

修正する。

またやってみる。

 

本田宗一郎さんのものづくりにも、

そんな姿勢が感じられます。

 

 

 

失敗のあとに「原因」より「次」を考える

 

失敗すると、

「なぜ、あんなことをしたんだろう」

「どうして、もっとちゃんとできなかったんだろう」

と考え続けることがあります。

 

原因を振り返ることは、

次に生かすために役立ちます。

 

そこで、

「次はどうする?」

まで考えることが大切になります。

 

たとえば、

「準備が足りなかった」

と分かったら、

「次は前日に一度確認しよう」

まで考える。

 

「緊張してうまく話せなかった」

と分かったら、

「次は最初の1分だけ練習しておこう」

と考える。

 

原因が、次の行動につながったとき、

失敗は学びに変わります。

 

 

 

心のエコ生活にもつながる

 

これは、私が伝えている「心のエコ生活」にもつながります。

 

心にも、使えるエネルギーには限りがあります。

 

失敗したあと、

「あんなことをしなければよかった」

「どうして私はいつもこうなんだろう」

「もっとちゃんとできたはずなのに」

と何度も考え続けると、心のエネルギーは過去に使われ続けます。

 

そこで、

「今回、何が分かっただろう」

「次は一つだけ、何を変えよう」

と考えてみる。

 

すると、心のエネルギーが

少しずつ次の一手へ向かっていきます。

 

過去の失敗から、

次に使えるものを一つ持って帰る。

 

それだけでも、

失敗との付き合い方は変わってきます。

 

 

 

失敗を恐れない人は、失敗を次に使える人

 

本田宗一郎さんの生き方を見ていると、

私はこんなことを感じます。

 

失敗を恐れない人は、失敗しない人ではなく、

失敗を次に使える人なのかもしれない。

 

失敗した経験を、

「自分はダメだ」

という材料にすることもできます。

 

「次はこうしてみよう」

という材料にすることもできます。

 

心理学から見ると、

失敗の意味づけが次の行動に影響します。

 

行動心理学から見ると、

失敗を避け続けることで、

回避する行動が強くなることがあります。

 

脳科学から見ると、

予想と結果のズレは、

次の行動を修正するための大切な情報になります。

 

こうして考えてみると、

失敗には、次へ進むための材料がたくさん含まれています。

 

もし今、

「失敗したらどうしよう」

と思って、なかなか一歩を踏み出せないことがあるなら、

こんなふうに考えてみてはいかがでしょうか。

 

「うまくいかなかったら、そこから何が分かるだろう」

失敗を見る角度が少し変わると、

次の一歩も少し軽くなるかもしれません。

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