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【ダメ少年、校長になる⑯】「叩かれないようにしよう」― 厳しい先生たちの中で身についた緊張

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【ダメ少年、校長になる⑯】「叩かれないようにしよう」― 厳しい先生たちの中で身についた緊張

【ダメ少年、校長になる⑯】「叩かれないようにしよう」― 厳しい先生たちの中で身についた緊張

2026/10/28

 

中学校へ入学する前、

私は一つ年上の兄から、

学校の様子をよく聞いていました。

 

当時の中学校は、

今よりも先生がかなり厳しかった時代です。

 

兄から聞く話も、

「先生の言うことを聞かないと叩かれる」

「すぐにビンタされる」

そんな話が多かったように記憶しています。

 

だから私は、中学校へ進学することを

楽しみにするというより、

「大丈夫かな」

「怒られないかな」

という不安の方を強く感じていました。

 

 

 

入学して最初に見た「怖そうな先生」

 

実際に中学校へ入ると、

数学の先生の中に、

とても怖そうな先生がいました。

 

表情も怖い。

声も低くて、つぶれた声。

話し方にも威圧感がある。

 

私は、

「この先生が自分の学年でありませんように」

と思っていました。

 

幸い、その先生は別の学年の担当でした。

 

それを知ったとき、

少しホッとしたことを覚えています。

 

 

今考えると、この時点ですでに私は、

「先生=勉強を教えてくれる人」

というより、

「怒られるかもしれない人」

として、かなり警戒していたのかもしれません。

 

 

 

「ビシッ!」という音で、姿勢を正した

 

ある日、体育祭の全体練習がありました。

 

当時、男子は全学年で組体操、

女子は全学年で創作ダンスを行っていました。

 

全員で整列していたときです。

 

近くにいた友達が、

膝が曲がっているという理由で

先生からお尻を叩かれました。

 

「ビシッ!」

大きな音がグラウンドに響きました。

 

私は、その音を聞いた瞬間、

とっさに姿勢を正しました。

 

「自分も叩かれないようにしなくちゃ」

そう思ったのです。

 

私は叩かれたわけではありません。

 

でも、隣にいる友達が

叩かれる姿を見ただけで、

体が反応しました。

 

 

 

人は「自分がされたこと」だけから学ぶわけではない

 

心理学には、観察学習という考え方があります。

 

人は、自分が直接経験したことだけでなく、

他人が何をして、どんな結果になったのか

を見ながら学びます。

 

友達が姿勢を崩す。

 

先生に叩かれる。

 

それを見た私は、

「姿勢を崩すと叩かれる」

と学びます。

 

そして、叩かれないように姿勢を正す。

 

これは、その場ではとても合理的な行動です。

 

危険を避けることができるからです。

 

でも、こうした経験が何度も続くと、

「正しくやらなければ」

「怒られないようにしなければ」

という緊張が、少しずつ身体に染み込んでいくことがあります。

 

 

 

「ちゃんとしなければ」が強くなる

 

厳しく叱られる環境では、子どもの意識が、

「どうしたらもっと良くできるだろう」

よりも、

 

「どうしたら怒られずに済むだろう」

に向きやすくなることがあります。

 

これは似ているようで、かなり違います。

 

 

前者は、

成長するために行動する。

 

後者は、

怖いことを避けるために行動する。

 

 

私も当時、

「良い姿勢をしよう」

より、

 

「叩かれないようにしよう」

という気持ちの方が強かったのでしょう。

 

 

行動心理学では、

不安や罰を避けることで

行動が強くなることがあります。

 

叩かれないために姿勢を正す。

 

怒られないために黙る。

 

注意されないために目立たなくする。

 

その結果、嫌なことが起きなければ、

「この行動をしていれば安全だ」

と学習していきます。

 

 

 

いつも少し身構えていた

 

今振り返ると、中学校の先生たちは、

どこかいつもピリピリしているように感じていました。

 

私は、

「どうして叩くんだろう」

と思っていました。

 

先生が近くにいると、少し緊張する。

 

声が大きくなると、身構える。

 

何か間違えないようにする。

 

こうした状態が続くと、

人は周囲の危険を早く察知しようとすることがあります。

 

 

誰かの表情。

声の変化。

足音。

その場の空気。

 

「怒っていないだろうか」

「次は自分ではないだろうか」

と注意を向けるようになります。

 

 

心理学では、こうした状態を

過覚醒や過度の警戒という視点から捉えることがあります。

 

もちろん、この経験だけで

何かの診断がつくわけではありません。

 

ただ、

安心して過ごすより、常に少し緊張している

という環境が、子どもの心に影響することはあります。

 

 

 

「間違える=危険」という感覚

 

私の場合、小学校時代からすでに、

「間違えたらどうしよう」

「怒られたらどうしよう」

という気持ちが強くありました。

 

そこへ中学校で、

「実際に叩かれる人がいる」

という経験が加わりました。

 

すると、

間違い → 注意される → 怒られる → 叩かれるかもしれない

という結びつきが強くなります。

 

本来、間違いは学習するために必要なものです。

 

でも、失敗したときに強く叱られる環境では、

「間違えても大丈夫」

とは感じにくくなります。

 

その結果、

 

手を挙げない。

質問しない。

目立たない。

失敗しそうなことを避ける。

という行動につながることがあります。

 

 

 

大人になってからも影響することがある

 

こうした経験は、

大人になったらすべて消えるとは限りません。

 

たとえば、職場で上司から強い口調で言われただけで、

必要以上に緊張してしまう。

 

失敗しないように細かいところまで確認し続ける。

 

人から注意されることを極端に怖がる。

 

自分の意見があっても、相手が強そうだと黙ってしまう。

 

「ちゃんとやらなくては」

と必要以上に自分を追い込む。

 

 

こうした反応の背景に、

昔の経験が関係している場合があります。

 

もちろん、全員がそうなるわけではありません。

 

同じ経験をしても、その後に

安心できる人との出会いや

成功体験があれば、感じ方は変化していきます。

 

ただ、

「どうして自分はこんなに失敗が怖いんだろう」

と感じる人が過去を振り返ってみると、

 

「間違えると怒られる」

「きちんとしていないと危ない」

という経験が見つかることがあります。

 

 

 

逆に、「厳しくするのが当たり前」と学ぶこともある

 

もう一つ考えられることがあります。

 

子どもは、大人の行動を見ながら、

「人を動かすときは、こうするものなんだ」

と学ぶこともあります。

 

強い声で叱る。

 

恐怖を与える。

 

失敗した人を責める。

 

そうした方法を何度も見ていると、大人になったときに、

「人を動かすには厳しくしなければならない」

という考えにつながる場合もあります。

 

 

つまり、同じ経験でも、

萎縮する方向に影響する人もいれば、

逆に、自分が強く振る舞う方向に影響する人もいるのです。

 

人の心は、それほど単純ではありません。

 

 

 

私が校長になって大切にしたかったこと

 

今、当時を振り返ると、

「どうして叩くんだろう」

と感じていた中学生の自分がいました。

 

その後、私は教員になり、教頭になり、校長になりました。

 

学校では、子どもが間違えることがあります。

 

教職員が失敗することもあります。

 

そんなとき、

恐怖で動かすのか。

理由を聞くのか。

失敗から何を学べるかを一緒に考えるのか。

この違いは大きいと思います。

 

 

私は自分自身が、怒られないように

周囲を見ながら過ごしてきたからこそ、

 

安心して失敗できる環境の大切さ

を強く感じるようになったのかもしれません。

 

 

 

今なら、あの頃の自分にこう言いたい

 

友達が叩かれる音を聞いて、

とっさに姿勢を正した中学生の自分。

 

今なら、

「怖かったんだね」

と言いたいです。

 

姿勢を正したのは、

弱かったからではありません。

 

自分を守るために、

身体がすぐに反応したのでしょう。

 

そして、

「間違えることと、

 怒られることは本来同じではないんだよ」

「失敗しても、

 安心してやり直せる場所はあるんだよ」

と伝えたいと思います。

 

 

 

あなたの人生も、心理学の視点から振り返ることができます

 

今、

人に怒られることが怖い。

強い口調の人の前で萎縮してしまう。

失敗することを必要以上に恐れる。

「ちゃんとしなければ」と自分を追い込みすぎてしまう。

 

そんな心の動きがある方もいるかもしれません。

 

その反応にも、そうなるようになった理由があることがあります。

 

 

子どもの頃、どんな大人を見てきたのか。

失敗したとき、どんな扱いを受けたのか。

周りの人が怒られる姿を見たとき、何を感じたのか。

 

人生を丁寧に振り返っていくと、

「だから私は、こんな場面で緊張するのかもしれない」

と、自分を理解する手がかりが見つかることがあります。

 

 

私のカウンセリングでも、

ご自身の生い立ちから現在までを一緒に振り返りながら、

心理学や行動心理学などの視点を取り入れて、

今の人間関係や生きづらさとのつながりを整理していくことができます。

 

あなたの人生も、心理学の視点から振り返ってみませんか。

 

自分のこれまでを知ることは、

これからの自分を知ることにもつながります。

 

 

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