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【ダメ少年、校長になる⑮】音楽ならまとめられる。でも話し合いはできなかった ― 副部長になって知った自分の弱さ

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【ダメ少年、校長になる⑮】音楽ならまとめられる。でも話し合いはできなかった ― 副部長になって知った自分の弱さ

【ダメ少年、校長になる⑮】音楽ならまとめられる。でも話し合いはできなかった ― 副部長になって知った自分の弱さ

2026/10/25

 

中学3年生のとき、

私は吹奏楽部の副部長になりました。

 

「副部長くらいなら、まあいいかな」

そんな気持ちで引き受けたように思います。

 

私は、部全体を運営するというよりも、

合奏のときに指揮をしたり、

音楽をまとめたりする役割を多く担っていました。

 

音程を丁寧に合わせる。

 

音のバランスを考える。

 

曲の表現をつける。

 

「ここはもう少しやわらかく」

 

「ここはもっと力強く」

 

そんなことを部員に伝えながら、

みんなで一つの音楽を作っていく。

 

 

この役割は、

私にとってそれほど苦ではありませんでした。

 

トランペットを何度も練習し、

合唱コンクールでは指揮者も経験していました。

 

音楽のことなら、

自分なりに考えを持っていました。

 

だから、みんなの前に立つこともできました。

 

 

 

ところが、ある日まったく違う役割を求められた

 

吹奏楽部では、ときどき部員同士の不満や

問題が起こることがありました。

 

そんなときは、部長が中心になってミーティングを開いていました。

 

部員の話を聴く。

 

問題点を整理する。

 

そして、

「これからは、こうしていこう」

という方向をみんなに伝える。

 

 

私はいつも、

その様子を横で見ていました。

 

あるとき、その部長から、

「今度は、お前がやってくれ」

と言われました。

 

私は困りました。

 

合奏ならできる。

 

音楽のことなら話せる。

 

でも、

「人の不満をどう聴けばいいのか」

 

「何から話し始めればいいのか」

 

「最後にどのようにまとめればいいのか」

まったく分かりませんでした。

 

 

 

「副部長なんだから…」

 

本当は自信がありませんでした。

 

でも、部長の勢いに押されるように、

「分かった」

と引き受けてしまいました。

 

そして、部員を集めて

ミーティングを始めました。

 

ところが、始めてみると、

何をどう進めればいいのか分かりません。

 

誰に話を振ればいいのか。

 

出てきた意見をどう整理すればいいのか。

 

意見が違ったときに、

どうまとめればいいのか。

 

自分の考えを、いつ、

どんな言葉で伝えればいいのか。

 

頭の中が混乱しました。

 

時間だけが過ぎていきました。

 

結局、1時間ほどのミーティングは、

何かが決まったわけでもなく、

まとまったわけでもなく、終わってしまいました。

 

 

 

「あれじゃあ、全然ダメじゃん」

 

ミーティングが終わったあと、

部長から言われました。

 

「あれじゃあ、全然ダメじゃん」

 

その言葉を聞いて、

「やっぱり自分には無理なんだ」

と思いました。

 

 

音楽のことなら、みんなの前に立てる。

 

でも、人間関係の問題を

話し合う場では、何もできなかった。

 

そんな自分の違いを、

はっきり感じた出来事でした。

 

 

 

「人前に立つ力」は一つではない

 

今振り返ると、

この経験はとても興味深いです。

 

私は、小学校時代には

人前に立つことそのものが苦手でした。

 

でも中学校に入り、

吹奏楽部の発表をした。

 

合唱コンクールで指揮者をした。

 

合奏でも指揮をした。

 

少しずつ、人前に立つ経験は増えていました。

 

 

だから、

「人前に立てるようになった」

と思っていた部分もあったのだと思います。

 

 

でも、今回のミーティングでは

うまくいきませんでした。

 

それはなぜなのか。

 

今なら、少し分かります。

 

私は、人前に立つこと全般に自信がついていたのではなく、

経験を積んだ特定の場面で自信がついていたのです。

 

音楽ならできる。

 

原稿を準備して発表するならできる。

 

指揮ならできる。

 

 

でも、

人の意見を聴きながら、

その場で考え、話し合いをまとめる。

 

これは、ほとんど経験したことが

ありませんでした。

 

 

 

心理学でいう「自己効力感」は、場面によって違う

 

心理学には、自己効力感という言葉があります。

 

「自分ならできそうだ」

という感覚です。

 

私はこの頃、音楽については

少しずつ自己効力感が育っていました。

 

何度も練習すれば吹けるようになった。

 

勉強も繰り返せば点数が上がった。

 

人前で発表することも、

準備すれば最後までできた。

 

そうした経験があったからです。

 

でも、

「人の話を聴いて、

 話し合いをまとめる」

ということについては、

成功体験がほとんどありませんでした。

 

だから、

「どうすればいいか分からない」

という状態だったのだと思います。

 

つまり、

自信がない=能力がない

とは限りません。

 

経験が少ないから、自信が持てない

こともあるのです。

 

 

 

「できなかったこと」を、自分全体の評価にしてしまった

 

でも、当時の私は

そこまで考えられませんでした。

 

ミーティングがうまくいかなかった。

 

部長から、

「あれじゃあ、全然ダメじゃん」

と言われた。

 

すると、

「自分はこういうことが

 できない人間なんだ」

と感じました。

 

 

心理学では、一つの失敗を、

「今回はうまくいかなかった」

ではなく、

 

「自分はダメな人間だ」

と、自分全体の評価に広げてしまうことがあります。

 

 

私も、

「話し合いの進め方を知らなかった」

ではなく、

 

「自分には人をまとめる力がない」

と受け取ってしまったのでしょう。

 

 

 

「みんな、俺のことどう思ってるんだろう」

 

そして、もう一つ気になったことがありました。

 

同級生や後輩たちが、

「自分のことをどう思っているのか」

です。

 

「あの副部長、何もできないな」

と思われているのではないか。

 

「頼りない」

と思われたのではないか。

 

そんなことが気になりました。

 

ここには、これまで何度も出てきた、

私の評価不安が表れていたのだと思います。

 

 

私は、うまくできなかったこと以上に、

「周りからどう見られたか」

を気にしていました。

 

これは、小学校時代から続いていた

自分の特徴でもありました。

 

 

 

音楽では、なぜ前に立てたのか

 

今振り返ると、

その違いもよく分かります。

 

音楽では、自分の中に

判断の基準がありました。

 

音が合っているか。

 

テンポはどうか。

 

強弱はどうするか。

 

このフレーズをどう表現するか。

 

自分なりに、

「こうした方がいい」

という考えを持てました。

 

だから、人前に立っても

話すことができました。

 

 

一方、ミーティングでは、

 

何を基準に

判断すればいいのか分からない。

 

相手の意見が違ったら

どうするのか分からない。

 

感情的になった人に

どう対応すればいいのかも分からない。

 

 

つまり、

経験も、知識も、方法も

まだ足りなかった

のだと思います。

 

 

 

リーダーシップも、経験して身につけていくもの

 

当時の私は、

「リーダーというのは、

 もともと人をまとめる力がある人がやるもの」

くらいに考えていたのかもしれません。

 

でも今は違います。

 

人の話を聴く。

 

意見を整理する。

 

対立している考えをつなぐ。

 

目的を共有する。

 

方向を示す。

 

こうした力も、経験の中で

少しずつ身につけていくものです。

 

 

最初からできる人ばかりではありません。

 

当時の私は、まだその経験が

ほとんどなかった。

 

 

だから、1時間のミーティングを

うまくまとめられなかった。

 

今なら、

「できなくて当然だった部分もある」

と思えます。

 

 

 

中3でできなかったことを、その後ずっと経験していくことになる

 

このシリーズは、

「ダメ少年、校長になる」

というタイトルで書いています。

 

中学3年生の私は、部員の話し合い一つ、

うまくまとめることができませんでした。

 

でも、その後の私は、教員になりました。

 

学年主任になりました。

 

教頭になりました。

 

そして、校長になりました。

 

 

そこでは、

人の話を聴く。

 

意見の違う人たちをまとめる。

 

問題が起きたときに話し合う。

 

組織の方向を考える。

 

そんなことを何度も経験することになります。

 

今考えると、中学3年生のこの失敗も、

その長い学びのスタート地点の一つだったのかもしれません。

 

 

 

今なら、あの頃の自分にこう言いたい

 

ミーティングをうまくまとめられず、

「自分には無理だ」

と思っていた中学3年生の自分に、

今ならこう言いたいです。

 

「まだ、やり方を知らなかっただけだよ」

 

「経験がなかったんだから、

 うまくできなくても仕方ないよ」

 

「音楽だって、最初から

 できたわけじゃなかったでしょう」

 

そして、

「人をまとめる力も、

 これから経験しながら身につけていくんだよ」

と伝えたいと思います。

 

 

 

あなたの人生も、心理学の視点から振り返ることができます

 

私たちは、何か一度うまくいかないと、

 

「自分には向いていない」

 

「自分には能力がない」

と考えてしまうことがあります。

 

 

でも、

本当に能力がないのでしょうか。

 

それとも、

まだ経験がないだけなのでしょうか。

 

まだ方法を知らないだけなのでしょうか。

 

 

人生を振り返ってみると、

「できなかったことが、

 経験を重ねるうちにできるようになった」

ということは意外とあります。

 

私のカウンセリングでも、

ご自身の生い立ちから現在までを一緒に振り返りながら、

心理学や行動心理学などの視点を取り入れて、

今の人間関係や生きづらさとのつながりを整理していくことができます。

 

あなたの人生も、心理学の視点から振り返ってみませんか。

 

自分のこれまでを知ることは、これからの自分を知ることにもつながります。

 

 

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