【私の人生を心理学で振り返る⑧】理由を聞いてほしかった ― 話す前に叱られた中学生の私(自分の体験談より)
2026/09/27
中学1年生の頃のことです。
その朝、私は部活動の朝練に参加していました。
いつもなら、朝の会に間に合う時間には終わります。
ところが、その日に限って、
朝練がなかなか終わりませんでした。
私は何度も時計を気にしていました。
「朝の会に遅れてしまう」
そう思いながらも、
自分だけ先に抜けることもできず、
部活動が終わるのを待っていました。
ようやく朝練が終わり、
私は急いで教室へ向かいました。
教室に入ると、
すでに朝の会が始まっていました。
私は先生に理由を伝えようとしました。
「部活が……」
そう言いかけた、そのときでした。
理由を話す前に、ビンタされた
先生は、私の話を
最後まで聞きませんでした。
そして、私はビンタされました。
突然のことでした。
何が起きたのか、
すぐには理解できなかったのだと思います。
もちろん、頬も痛かった。
でも、今振り返ると、
それ以上に心の方が痛かったように思います。
「どうして?」
「まだ何も話していないのに」
「僕には理由があるのに」
そんな思いがあったはずです。
けれど、その場では何も言えませんでした。
「言わなかった」のではなく、「言えなくなった」
ここを、今の私はとても
大切なことだと感じています。
私は、自分の理由を隠そうとしたわけではありません。
説明したくなかったわけでもありません。
むしろ、教室に入ったときには、
「朝練が長引いたんです」
と伝えようとしていました。
でも、突然強い言葉を受け、
さらに身体的な衝撃まで加わったことで、
私は言葉を失いました。
心理学では、
強い恐怖や突然の衝撃を受けたとき、
人は「戦う」「逃げる」だけでなく、
身体や思考が固まるような反応を示すことがあります。
いわゆるフリーズ反応です。
頭では何か言いたい。
でも言葉が出ない。
身体も動かない。
ただ、その場に立っているしかない。
当時の私にも、
それに近いことが起きていたのかもしれません。
実際、私は「聞いてもらえる空気ではなかった」と感じ、
ただその場に立っていました。
遅刻したかったわけではなかった
私は朝練をさぼったわけではありません。
わざと朝の会に遅れたわけでもありません。
ただ、朝練が長引いてしまった。
それだけでした。
だからこそ、
「せめて理由を聞いてほしかった」
という思いが残ったのだと思います。
人は、自分の事情を理解してもらえたとき、
「分かってもらえた」
という安心を感じます。
反対に、事情を聞かれる前に決めつけられると、
「自分のことを分かってもらえなかった」
という傷つきが残ることがあります。
私にとってこの出来事は、
叩かれたことだけがつらかったのではありません。
自分の言葉を聞いてもらえなかったこと。
そこにも大きな痛みがあったのだと思います。
「言っても、どうせ聞いてもらえない」
この出来事のあと、
私の心の中には一つの思いが残りました。
「言っても、どうせ聞いてもらえない」
大きな声で泣き続けるような悲しさではありません。
でも、心の奥に静かに残る思いでした。
行動心理学の視点から見ると、
ここはとても重要です。
人は、自分の行動と、
そのあとに起きたことを結びつけながら学んでいきます。
私の場合は、
理由を話そうとする
↓
話を聞いてもらえない
↓
強く叱られる
↓
怖い思いをする
という経験になりました。
こうした経験が心に残ると、
その後、似たような場面で、
「言っても無駄かもしれない」
「言い訳だと思われるかもしれない」
「黙っていた方がいいかもしれない」
と考えやすくなることがあります。
つまり、自分の気持ちを言わないことが、自分を守る方法になっていくのです。
相手の表情を先に読むようになる
これまでこのシリーズで書いてきたように、
小学校時代の私は、
人の目や周囲の空気をかなり気にしていました。
先生の顔。
友達の表情。
その場の雰囲気。
「怒られないだろうか」
「変に思われないだろうか」
そんなことを気にする癖が、
すでにありました。
そこに今回の経験が加わりました。
「理由を話す前に怒られることもある」
そう学んでしまうと、
ますます自分の言葉より、
相手の表情や機嫌を先に見るようになります。
話しても大丈夫そうか。
今、言ったら怒られないか。
黙っていた方が安全ではないか。
こうして、自分の気持ちを伝える前に、相手を読む
という行動が強くなっていった可能性があります。
「自分の気持ち」より「相手の反応」が先になる
この経験は、その後の
人間関係にもつながるところがあります。
本当は言いたいことがある。
理由もある。
自分の考えもある。
それでも、
「こんなことを言ったら、相手はどう思うだろう」
と考えてしまう。
そして、言葉を飲み込む。
心理学では、
このように自分の内側よりも
周囲の反応に注意が向きやすくなることがあります。
私の場合、幼い頃から積み重なっていた
「人の顔色を見る」という行動が、
中学生になってさらに強くなっていったのかもしれません。
子どもは、まず「聞いてもらえる」と感じることで話せる
子どもは、理由を言おうとしていることがあります。
でも、先に決めつけられると、
言葉を飲み込んでしまうことがあります。
「どうしたの?」
「何があったの?」
その一言で、話せる子もいます。
これは、今でも私が大切だと思っていることです。
子どもが何か問題を起こしたように見えるときでも、
その行動の前には何かがあります。
遅刻した。
宿題を忘れた。
黙っている。
返事をしない。
その表面だけを見ると、
「どうしてそんなことをしたの」
と言いたくなります。
でも、その前に、
「何があったの?」
と聞くだけで、見えてくるものがあります。
子どもは、聞いてもらえると感じたときに、
初めて話せることがあります。
今なら、あの頃の自分にこう言いたい
教室に駆け込み、
「部活が……」
と言いかけた中学1年生の自分。
今なら、その子にこう言ってあげたいと思います。
「ちゃんと理由があったんだよね」
「話そうとしていたんだよね」
「まず、聞いてほしかったんだよね」
あのとき欲しかったのは、
大げさな慰めではなかったと思います。
ほんの少し、
自分の話を聞いてもらう時間。
それだけだったのかもしれません。
あなたの人生も、心理学の視点から振り返ることができます
今、
自分の気持ちを言うのが苦手。
理由を説明する前に諦めてしまう。
相手の機嫌を見てから話す。
言いたいことを飲み込んでしまう。
そんな心の動きにも、
これまでの経験が関係していることがあります。
いつから言いにくくなったのか。
その頃、何があったのか。
話そうとしたとき、
周りの大人はどんな反応をしたのか。
少しずつ振り返っていくと、
「だから私は、あの場面で言葉が出なくなるのかもしれない」
と、自分を理解する手がかりが見つかることがあります。
私のカウンセリングでも、
ご自身の生い立ちから現在までを一緒に振り返りながら、
心理学や行動心理学などの視点を取り入れて、
今の人間関係や生きづらさとのつながりを整理していくことができます。
あなたの人生も、心理学の視点から振り返ってみませんか。
自分のこれまでを知ることは、これからの自分を知ることにもつながります。
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