【アドラー心理学 第4回】褒めるより勇気づける ― 相手の心を支える言葉とは?
2026/11/08
「すごいね!」と褒めていませんか?
子どもがテストでよい点数を取ったとき、
「すごいね! よく頑張ったね」と声をかける。
職場で部下が仕事をうまく進めたとき、
「よくできたね」と褒める。
私たちは、相手の努力や成果を認めたいとき、
自然と褒め言葉を使っています。
褒めてもらえれば、
うれしい気持ちになることもありますし、
次も頑張ろうと思うこともあるでしょう。
ところが、アドラー心理学では、
「褒めること」と
「勇気づけること」を区別して考えています。
いったい、どこが違うのでしょうか。
今回は、アドラー心理学が大切にしている
「勇気づけ」について考えてみましょう。
褒めることと勇気づけることの違い
例えば、子どもが自分から
部屋の掃除をしたとします。
それを見た親が、
「えらいね! よくできたね」と声をかけました。
これは、子どもの行動を
よいものとして評価している言葉です。
一方、「部屋がきれいになって気持ちがいいね。ありがとう」
と伝えたらどうでしょうか。
こちらは、子どもの行動によって
自分がどう感じたのかを伝えています。
どちらも温かい言葉ですが、
相手への伝わり方には違いがあります。
アドラー心理学では、褒めることが、
褒める側と褒められる側という
上下の関係につながる場合があると考えます。
一方、勇気づけでは、
お互いを尊重する対等な関係を大切にします。
もちろん、褒める言葉が
すべて悪いということではありません。
大切なのは、相手を自分の思いどおりに
動かそうとしているのか、
それとも相手の意思や行動を尊重しているのかということです。
勇気づけは、言葉だけではない
勇気づけというと、
「あなたならできる」「頑張って」
といった励ましの言葉を想像する人もいるかもしれません。
しかし、アドラー心理学の勇気づけは、
もう少し広い意味を持っています。
例えば、仕事で失敗して
落ち込んでいる同僚がいたとします。
そんなとき、すぐに「大丈夫、次はうまくいくよ」
と励ますこともできます。
しかし、相手がまだ失敗したことを
受け止めきれていない場合、
その言葉が負担になることもあるでしょう。
そこで、「それは大変だったね」と相手の話を聴く。
「今、何か手伝えることはある?」と声をかける。
相手が自分の気持ちを整理できるまで、そばで見守る。
こうした関わり方も、
勇気づけにつながる可能性があります。
勇気づけとは、相手が自分の力を信じ、
次の一歩を踏み出せるように支えることなのです。
失敗したときこそ、勇気づけが大切
人は、物事がうまくいっているときには、
自信を持ちやすいものです。
しかし、失敗したときや思うような結果が出なかったときには、
自分の力を疑ってしまうことがあります。
例えば、新しい仕事に挑戦した部下が、
途中でミスをしてしまったとします。
「どうしてこんなミスをしたの?」と責められれば、
次に挑戦することが怖くなるかもしれません。
一方、「どこで難しさを感じた?」
「次はどんな方法が考えられるかな?」
と声をかけられたら、どうでしょうか。
自分で状況を振り返り、
解決方法を考えるきっかけになるかもしれません。
もちろん、ミスの内容によっては、
問題点を明確に伝えたり、
具体的な改善方法を指導したりする必要があります。
勇気づけは、
失敗を見過ごすことではありません。
相手の人格や価値を否定することなく、
必要なことを伝え、再び取り組めるように支えることです。
「ありがとう」も勇気づけの言葉になる
勇気づけは、何か特別なことをするときだけに
必要なものではありません。
日常生活の何気ない場面にも、
勇気づけの機会はあります。
家族が食事の準備をしてくれたときに、
「ありがとう。助かったよ」と伝える。
職場で同僚が資料を用意してくれたときに、
「準備してくれたおかげで、会議がスムーズに進んだよ」と伝える。
友人が話を聴いてくれたときに、
「話を聴いてもらえて、気持ちが少し楽になったよ」と伝える。
どれも難しい言葉ではありません。
しかし、こうした言葉には、
相手の存在や行動を大切に思っていることが表れています。
相手の行動を評価するだけでなく、
その行動が自分にとってどのような意味を持ったのかを伝える。
そんな小さな積み重ねが、お互いを尊重し、
支え合える関係につながっていくのではないでしょうか。
心のエコ生活とのつながり
私は、「心のムダ遣いを減らす生き方」として、
心のエコ生活を提案しています。
その中には、「100点を目指さない」
「一人で抱え込まない」という習慣があります。
私たちは、ときに「失敗してはいけない」
「周りの期待に応えなければならない」と考え、
必要以上に自分を追い込んでしまいます。
そのようなとき、誰かが自分の気持ちを理解し、
できていることを認めてくれると、
心が少し軽くなることがあります。
そして、勇気づけは他人に対してだけでなく、
自分自身に向けることもできます。
「今日は思うようにできなかったけれど、ここまでは取り組めた」
「今回は難しかった。次は少しやり方を変えてみよう」
そんなふうに、自分に声をかけてみるのもよいでしょう。
自分を責めることに心のエネルギーを使い続けるよりも、
これからできることに目を向けていく。
それも、心のエコ生活につながる大切な習慣だと思います。
誰かを評価する言葉から、その人の心を支える言葉へ。
そして、他人だけでなく、
自分自身にも温かい言葉をかけてみませんか。
次回は、「人に嫌われるのが怖い ― 自分らしく生きるためのアドラー心理学」について考えていきます。
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