人生を立て直すきっかけは、小さな出会いから始まる――朝ドラを見て感じたこと
2026/11/07
朝ドラを見ていて、
今回はいろいろなことを感じました。
主人公は妊娠中に突然破水し、
お腹の赤ちゃんを失うという、
とても悲しい経験をします。
待ち望んでいた命を失う。
その悲しみがどれほど大きかったのか、
簡単に言葉にはできないと思います。
人が大切なものを失ったとき、
悲しみ方や立ち直るまでの時間は一人ひとり違います。
「いつまで悲しんでいるの」
「そろそろ元気にならなければ」
と区切れるものではありません。
心理学でも、悲嘆から立ち直るまでに
決まった期間があるわけではないと考えられています。
だからこそ、主人公が落ち込んでいる姿も、
とても自然なものに感じました。
そんな主人公を見て、学生だった夫が言います。
「北海道へ行こう」
新しい土地で、もう一度やり直そうと。
夫は大学を辞め、
以前話のあった北海道の銀行で働くことを決めます。
私は、この決断にも強く心を動かされました。
大学を辞める。
慣れ親しんだ東京を離れる。
遠く北海道へ行く。
当時なら、今以上に
大きな決断だったでしょう。
もちろん、北海道へ行けば
悲しみがなくなるわけではありません。
場所を変えただけで、
失ったものが戻ってくるわけでもありません。
それでも、
「ここで二人でもう一度生きていこう」
という夫の覚悟があったのではないかと思います。
そして主人公も、その決断についていきます。
想像していた以上に厳しい北の国での暮らし。
寒さもある。
知り合いも少ない。
生活も決して楽ではない。
また一からのスタートです。
ところが、そこに小さな出来事が起こります。
近所の男の子が、
お母さんに言われて
鮭の切り身を持ってきてくれました。
ほんの小さな差し入れです。
でも、知らない土地へ来たばかりの二人にとって、
その鮭は単なる食べ物以上のものだったのではないでしょうか。
「ここにいていいよ」
「困ったときは、お互いさまですよ」
そんな気持ちも、一緒に届けられたように感じました。
主人公は、
「何かお礼をしたい」
と思います。
男の子の着物を見ると、
ほころびがありました。
そこで、きれいに縫ってあげます。
それを見ていた地元の人が、
「縫い物が上手なんだから、
ここで縫い物をしたらいい」
と声をかけます。
すると少しずつ、
近所の人たちが縫い物を頼みに来るようになります。
一人。
また一人。
人とのつながりが増えていきます。
そして主人公は、新しい土地で
少しずつ自分の居場所をつくっていきます。
この場面を見ながら私は、
人が立ち直っていくきっかけは、
案外こういう小さなところにあるのかもしれない
と思いました。
大きな悲しみがあったからといって、
ある日突然、
「もう大丈夫」
となるわけではありません。
悲しみを抱えながら、
今日は食事をする。
人と話をする。
誰かに親切にしてもらう。
自分にもできることがあると気づく。
誰かから、
「ありがとう」
と言ってもらう。
そんな小さな経験が積み重なって、
少しずつ、
「もう一度生きていこうかな」
という気持ちにつながっていくことがあります。
心理学には「心的外傷後成長」という考え方があります。
大きなつらい経験をしたあと、
人とのつながりを以前より大切に感じたり、
新しい可能性に気づいたり、
自分自身の強さを感じるようになることがあります。
でも、これは、
「つらい経験をすれば人は成長する」
という意味ではありません。
そして、
「成長したのだから、
もう悲しまなくていい」
ということでもありません。
悲しみは悲しみとして残る。
それでも、人はその悲しみを抱えながら、
新しい人生をつくっていくことがあるのです。
今回の主人公も、
お腹の子を失った悲しみを忘れたわけではないでしょう。
でも北海道で、
鮭を届けてくれた子どもと出会い、
その着物を縫い、
近所の人から声をかけてもらい、
少しずつ人とのつながりができていきました。
人は、一人だけで立ち直るとは限りません。
誰かからかけてもらった言葉。
誰かから受けた親切。
自分を必要としてくれる人。
そうしたものが、
心の回復を支えることがあります。
研究でも、周囲からの支えは、
つらい経験をしたあとの心の回復や、
その後の成長と関連することが報告されています。
だから、悩んでいる人に対して、
「頑張って」
と励ますことだけが支えではないのだと思います。
何かをそっと差し入れる。
話を聞く。
できることを頼んでみる。
いつもと同じように接する。
そんな小さな関わりが、
相手にとって大きな支えになることもある。
今回の朝ドラを見ながら、
私はそんなことを感じました。
人生には、自分ではどうすることも
できない出来事があります。
深く落ち込むこともあります。
新しい場所へ行っても、
最初からうまくいくとは限りません。
それでも、
一人の人との出会い。
一つの親切。
一つの「あなたにお願いしたい」。
そこから人生が、
また少しずつ動き始めることがあります。
悲しみをなかったことにするのではなく、
悲しみを抱えながらも、
もう一度、自分の居場所をつくっていく。
主人公の姿を見ながら、
人にはそんな力もあるのだと思いました。
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