【ダメ少年、校長になる⑱】本当は音楽高校へ行きたかった ― 家族を思って、自分から夢をしまい込んだ中学3年の私
2026/11/05
中学3年生になり、
いよいよ進路を考える時期になりました。
私は中学1年生から吹奏楽部で
トランペットを吹いていました。
最初は楽譜も十分に読めず、
思うように吹けませんでした。
それでも、
「もっと上手になりたい」
という気持ちは強く、専門書を読みながら、
毎日同じことを繰り返し練習しました。
できなければ、またやる。
分からなければ、また読む。
そんなことを続けるうちに、
少しずつトランペットも上達していきました。
音楽は、私にとって特別なものになっていました。
テレビドラマの主人公に夢中になった
ちょうどその頃、
私はテレビで放送されていた
「赤いシリーズ」に夢中になっていました。
そのドラマには、ピアノコンクールに
挑戦する主人公が登場していました。
困難な状況の中でも、
主人公はピアノを諦めません。
私の記憶に強く残っているのは、
主人公が自由にピアノを弾けない状況になっても、
床に鍵盤を書いて練習を続ける場面です。
「そこまでして、うまくなりたいんだ」
私は、その姿に強く惹かれました。
ドラマの中で流れるクラシック音楽にも魅了されました。
そして、いつしか私は、
「自分も音楽高校へ行きたい」
と思うようになりました。
本当は、もっと音楽を勉強したかった
トランペットをもっと上手に吹きたい。
もっと音楽のことを知りたい。
高校でも音楽を続けたい。
その気持ちは本物だったと思います。
誰かに勧められたわけではありません。
心理学でいう内発的動機づけに近いものだったのでしょう。
「やらなければならない」
ではなく、
「やりたい」
という気持ちです。
それまでの私は、
周りからどう見られるかを気にしたり、
怒られないようにしたりすることが多い子どもでした。
でも、音楽については違いました。
自分から、
「もっとやりたい」
と思えたのです。
でも、家のことを考えてしまった
一方で、現実のことも考えました。
私たちは3人兄弟でした。
兄はすでに県立高校へ通っていました。
父は左官の仕事をしていました。
決して裕福な家庭ではありませんでした。
私は中学生なりに、
「音楽高校へ行ったら、お金がかかるだろう」
「家に負担をかけるんじゃないか」
と考えました。
そして、
「音楽高校へ行きたい」
という気持ちを、両親に話すことができませんでした。
反対されたわけではありません。
「そんなところには行かせられない」
と言われたわけでもありません。
私は、相談する前に、
「きっと無理だろう」
と自分で決めてしまったのです。
自分の気持ちより、家族の事情を先に考えた
今振り返ると、ここにも私の心のクセが
表れていたように思います。
「自分はどうしたいのか」
より先に、
「親はどう思うだろう」
「家計は大丈夫だろうか」
「迷惑をかけないだろうか」
と考えていました。
もちろん、家族のことを考えるのは
悪いことではありません。
家計を気にすることも、
家族を思いやる気持ちの一つです。
ただ、当時の私は、
「行けるかどうか相談してみる」
という選択肢を持てませんでした。
自分の希望を伝えて、
そこから家族で考える。
その前に、
「やめておこう」
と、自分の気持ちを抑えたのです。
「言って断られる」のではなく、「言う前に諦める」
心理学的に見ると、
こうした行動は自己抑制や自己沈黙という
視点から考えることができます。
本当は言いたいことがある。
本当は希望がある。
でも、
「迷惑をかけるかもしれない」
「どうせ無理だろう」
と考えて、言葉にしない。
すると、相手に断られたわけではないのに、
自分で選択肢を閉じてしまいます。
私の場合もそうでした。
両親に反対されたわけではありません。
私は、反対される前に、自分で自分の気持ちを引っ込めてしまったのです。
これは、その後の人間関係にも
つながりやすい心の動きだと思います。
本当はこうしたい。
でも、相手の負担になるかもしれない。
本当は言いたい。
でも、嫌な顔をされるかもしれない。
だから言わない。
そうすると、自分の希望より、
周りの事情を優先することが習慣になっていくことがあります。
私が選んだのは、商業高校だった
結局、私は自分から商業高校へ
進学しようと決めました。
高校を卒業したら、就職する。
当時の私は、それが家族にとって
一番いい道だと思っていました。
音楽高校へ行きたいという気持ちは、
自分の中にしまいました。
そして、商業高校の受験に向けて
勉強を始めました。
もともと、成績は決して良い方ではありませんでした。
偏差値も、なかなか上がりません。
それでも、私はここでも、
それまでに身につけた方法を使いました。
同じ問題集を、何度もやる。
間違えたところを、またやる。
できなければ、もう一度。
繰り返し、繰り返し。
トランペットで身につけたやり方です。
「繰り返す」という力は、ここでも自分を助けた
私は、もともと何でも器用にできる
タイプではありませんでした。
一度で覚えることも得意ではありませんでした。
でも、
「繰り返す」
ことはできました。
音楽でもそうでした。
勉強でもそうでした。
一回でできなければ、二回。
それでもだめなら、三回。
少しずつでも前に進む。
心理学でいう自己効力感は、
「最初からできる」
という感覚だけではありません。
「やれば少しずつできるかもしれない」
という経験からも育っていきます。
私は受験勉強でも、その感覚を少しずつ
使えるようになっていたのでしょう。
そして、なんとか商業高校に合格することができました。
合格はうれしかった。でも、心の奥には別の気持ちもあった
商業高校に合格したことは、
もちろんうれしかったです。
頑張った結果が出たのですから。
でも、今振り返ると、
その進路が本当に一番やりたかったことだったのかというと、
そうではありませんでした。
本当は、もっと音楽をやりたかった。
音楽高校へ行ってみたかった。
その気持ちは、消えたわけではありませんでした。
ただ、
「仕方がない」
と自分に言い聞かせて、
心の奥にしまっていたのだと思います。
自分の気持ちを抑えることは、本当に優しさなのか
今になって思うことがあります。
家族のことを考えて、自分の希望を抑える。
それは一見、優しい行動に見えます。
でも、自分の希望を一度も
伝えないまま諦めてしまうと、
自分の人生なのに、
「自分がどうしたいのか」
が後回しになってしまいます。
もし当時、
「音楽高校へ行きたい」
と一度でも両親に話していたら、
どうなっていたのでしょう。
やはり難しかったかもしれません。
反対されたかもしれません。
でも、家族で一緒に考えることは
できたかもしれません。
今の私なら、中学3年生の自分に、
「まず、自分の気持ちを話してみてもいいんだよ」
と言いたいと思います。
一度しまい込んだ夢は、その後また戻ってくる
このとき私は、音楽高校への進学を諦めました。
商業高校へ進み、卒業後は就職する。
そう決めました。
でも、不思議なものです。
一度しまい込んだはずの音楽への思いは、
完全には消えませんでした。
その後、私の人生は再び音楽の方向へ
動いていくことになります。
中学3年生の私は、そんな未来をまったく知りません。
ただ、
「本当は音楽をもっとやりたい」
という気持ちだけは、心のどこかに残っていました。
今振り返ると、その思いが消えなかったことにも、
大きな意味があったのだと思います。
あなたの人生も、心理学の視点から振り返ることができます
今、
本当はやりたいことがある。
でも、家族に迷惑をかけそうだから言えない。
相手に負担をかけたくなくて、自分の希望を引っ込めてしまう。
「どうせ無理」と、相談する前に諦めてしまう。
そんなことはないでしょうか。
もちろん、すべての希望がかなうわけではありません。
現実的に難しいこともあります。
でも、
「かなうかどうか」と、
「自分の気持ちを伝えていいかどうか」は別のことです。
人生を振り返ってみると、
「あのとき、本当は何をしたかったのだろう」
と気づくことがあります。
そこには、今の自分の生き方につながる
大切な手がかりが隠れていることがあります。
私のカウンセリングでも、
ご自身の生い立ちから現在までを一緒に振り返りながら、
心理学などの視点を取り入れて、
今の人間関係や生きづらさとのつながりを整理していくことができます。
あなたの人生も、心理学の視点から振り返ってみませんか。
自分のこれまでを知ることは、
これからの自分を知ることにもつながります。
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