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【私の人生を心理学で振り返る⑥】まちがえるのがこわい ― 答えより母の顔が気になった小学生の私(自分の体験談より)

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【私の人生を心理学で振り返る⑥】まちがえるのがこわい ― 答えより母の顔が気になった小学生の私(自分の体験談より)

【私の人生を心理学で振り返る⑥】まちがえるのがこわい ― 答えより母の顔が気になった小学生の私(自分の体験談より)

2026/09/22

 

 

小学校の頃、

私は算数があまり得意ではありませんでした。

 

ある日、算数のテストで、

とても悪い点を取ってしまったことがあります。

 

家に帰って、そのことを母に話しました。

 

すると母は、

「いっしょにやってみよう」

と言ってくれました。

 

最初は、

私も少し安心したのだと思います。

 

計算問題は、

説明してもらうと少し分かりました。

 

ところが、文章題になると、

何が書いてあるのか、

何を聞かれているのか、

よく分かりませんでした。

 

母は何度も説明してくれました。

 

それでも、私は理解できませんでした。

 

 

 

「お母さんは、学年で一番だったのよ」

 

母は、

よくこんなことを言っていました。

 

「お母さんは、小学校のとき、学年で一番だったのよ」

 

兄も、妹も、

勉強は比較的できる方でした。

 

その中で、私は自分だけ

違うように感じていました。

 

「どうして僕は分からないんだろう」

 

そんな気持ちが、

少しずつ大きくなっていきました。

 

人は、周りの人と自分を比べながら、

自分がどんな人間なのかを理解していくことがあります。

 

 

心理学では、こうした比較を社会的比較と呼びます。

 

家族の中で、

「お母さんは勉強ができた」

「兄も妹もできる」

という情報があると、

 

子どもは自然に、

「では、自分はどうなんだろう」

と考えます。

 

 

私の場合、その比較が、

「自分はできない方なのかもしれない」

という感覚につながっていったのだと思います。

 

 

 

だんだん、母の顔が気になってきた

 

母は何度も説明してくれました。

 

でも、私はなかなか分かりません。

 

すると、少しずつ

母の表情が変わっていきました。

 

その変化を、

私はよく覚えています。

 

そして、しばらくすると母が、

「こっちとこっち、どっちだと思う?」

と聞きました。

 

私は一生懸命考えました。

 

でも、その頃には、問題そのものよりも、

「間違えたら、どうなるんだろう」

ということの方が気になっていました。

 

答えを考える。

 

母の顔を見る。

 

また答えを考える。

 

また母の顔を見る。

 

だんだん、算数の問題よりも、

母の表情の方が気になるようになっていきました。

 

 

 

不安が強くなると、考える力も使いにくくなる

 

この状態は、

今振り返るととても興味深いです。

 

本来なら、文章題の意味を

考えるために頭を使いたい。

 

ところが私は、

「怒られるかもしれない」

「また間違えるかもしれない」

ということにも注意を使っていました。

 

心理学では、不安が強くなると、

注意が「課題」よりも「脅威」に向きやすくなることがあります。

 

つまり私の場合、

問題文を読むこと

よりも、

 

母の表情を読むこと

に、心のエネルギーを使っていたのかもしれません。

 

すると、ますます

問題を考える余裕が減ります。

 

分からない。

 

焦る。

 

母の顔が気になる。

 

さらに分からなくなる。

 

そんな循環に入っていったのでしょう。

 

 

「こっち……?」

 

私は恐る恐る、

「こっち……?」

と答えました。

 

小さな声だったと思います。

 

すると母が、強い声で言いました。

 

「バカ!!!!」

 

 

私は、その場で、

 

「そうなんだ。

 僕はバカなんだ」

と思いました。

 

今でも、

その場面を覚えています。

 

悲しかった。

怖かった。

情けなかった。

 

そして、

「どうしたら勉強が

 できるようになるんだろう」

と思いました。

 

でも、その答えは分かりませんでした。

 

 

 

子どもは「できなかったこと」と「自分自身」を結びつけることがある

 

大人から見れば、

「この問題ができなかった」

ことと、

 

「その子自身の価値」

は別のことです。

 

でも、子どもはその二つを

分けて考えるのが難しいことがあります。

 

「問題が分からなかった」が、

「僕は頭が悪い」になり、

 

さらに、

「僕はバカなんだ」

という自己評価につながることがあります。

 

 

心理学では、人は経験を積み重ねながら、

「自分はこういう人間だ」

という自己概念を作っていきます。

 

特に、身近な大人から繰り返し

受け取った言葉は、

その自己概念に影響することがあります。

 

私の場合、この一言が、

「勉強ができない自分」

というイメージを強める一つ

のきっかけになったのかもしれません。

 

 

 

「まちがえないこと」が目的になっていく

 

このような経験が続くと、

勉強の目的が変わっていくことがあります。

 

「分かるようになりたい」

よりも、

「まちがえたくない」

「怒られたくない」

という気持ちが強くなっていくのです。

 

行動心理学の視点から見ると

 

間違える

怒られる

怖い思いをする

 

という経験が重なると、

間違える可能性のある場面

そのものを避けたくなることがあります。

 

手を挙げない。

 

難しい問題に挑戦しない。

 

分からなくても質問しない。

 

黙ってやり過ごす。

 

そうすれば、

その瞬間の怖さは少し減ります。

 

すると、

その行動は繰り返されやすくなります。

 

これは前回の「目立たないようにする」と同じように、

不安を避けるための行動が習慣になっていくという点で、

行動心理学的に見ることができます。

 

 

 

「できない」より、「こわい」が先にあった

 

今振り返ると、

私は単に算数ができなかっただけでは

なかったように思います。

 

問題を前にしたとき、

「また間違えるかもしれない」

「怒られるかもしれない」

という怖さが先に出ていたのです。

 

怖い。

焦る。

考えられなくなる。

間違える。

自信をなくす。

また怖くなる。

 

こうして、

勉強に対する苦手意識が

強くなっていったのだと思います。

 

ここには、前回書いた予期不安も関係しています。

 

まだ間違えていないのに、

「また失敗するかもしれない」

と先のことを考えて、すでに緊張してしまう。

 

その緊張が、さらに学習を難しくしていたのでしょう。

 

 

 

失敗への反応は、その後の学び方にも影響する

 

子どもが間違えたとき、

「どこでつまずいたのかな」

「ここまでは分かっているね」

「別のやり方で考えてみよう」

と関わってもらえると、

失敗は学びの材料になります。

 

一方で、

「こんなことも分からないの?」

「どうしてできないの?」

という経験が続くと、

子どもにとって失敗が、

 

学ぶための経験

よりも、

 

自分を否定される経験

になってしまうことがあります。

 

そうなると、

挑戦すること自体が怖くなります。

 

 

心理学でいう自己効力感

つまり「自分ならやれそうだ」と

いう感覚も育ちにくくなります。

 

 

私自身、小学校時代は、

「やればできる」

という感覚より、

「また間違えるかもしれない」

という気持ちの方が強くなっていったように思います。

 

 

 

母も、なんとか分からせようとしていたのだと思う

 

今、大人になって当時を振り返ると、

母にも母なりの思いがあったのでしょう。

 

何とか分かるようになってほしい。

勉強で困らないようになってほしい。

 

そんな思いで、

何度も説明してくれていたのだと思います。

 

ただ、子どもの私は、

その思いよりも、

母の表情の変化や、

強い言葉の方を受け取っていました。

 

大人が伝えようとしていることと、

子どもが実際に受け取るものは、

必ずしも同じではありません。

 

このことも、

自分の経験を振り返って感じることの一つです。

 

 

 

今なら、あの頃の自分にこう言いたい

 

あの頃の私は、

「僕はバカなんだ」

と思いました。

 

今なら、あの子に、

「分からないところがあったんだね」

「怖くて、考えにくくなっていたんだね」

「一つの問題ができなかったことと、

 あなた自身の価値は別なんだよ」

と伝えたいと思います。

 

子どもは、大人の言葉を、

自分が思っている以上に深く受け取ることがあります。

 

そして、その言葉を何十年も

覚えていることがあります。

 

私にとって、

「バカ!!!!」

という言葉も、その一つでした。

 

 

 

あなたの人生も、心理学の視点から振り返ることができます

 

今、

失敗するのが怖い。

間違えると必要以上に落ち込む。

人に教えてもらう場面で緊張する。

「できない自分」をすぐに責めてしまう。

 

そんな反応の背景にも、

これまでの経験が関係していることがあります。

 

子どもの頃、

失敗したときにどんな言葉をかけられたのか。

分からないとき、周りの大人はどんな表情をしていたのか。

そのとき、自分は何を感じたのか。

 

人生を丁寧に振り返っていくと、

「自分は、ここから影響を受けていたのかもしれない」

と気づくことがあります。

 

 

私のカウンセリングでも、

ご自身の生い立ちから現在までを

一緒に振り返りながら、

心理学や行動心理学などの視点を取り入れて、

今の人間関係や生きづらさとのつながりを整理していくことができます。

 

あなたの人生も、心理学の視点から振り返ってみませんか。

 

自分のこれまでを知ることは、

これからの自分を知ることにもつながります。

 

※著書「おとなのことばがわからない」はこちらから

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